2012年3月まとめ書いたもの
・長編出した
・短編改稿して出した
・長編を一編改稿中
読んだもの
13冊
感想には
ネタバレが含まれる場合があります。
・「白百合女子大学 舟崎教授の創作演習」

大学の創作科みたいなところの講義をつづったもの。
コピーを考えたり、俳句、詩、笑い話、怪談、などをテーマにして教えていく。
特にはっとするような内容ではないけれど、基本から丁寧に教える姿勢に好感を持った。
とかく実用的で、すぐに役に立つものが求められる世界ではあるけれど、遠回りにゆっくりやったっていいのだと思う。
短歌や詩、俳句といったものは騒がしさの中では読めないものかも知れない。
心が忙しいと、詩なんか読んでられない。
たまに詩や短歌を読むのはいいことだと思う。自分の状態を知ることも出来るかも。
自分の中で短歌ブームは去ったのだけど、今度はまた詩を読んでみるのもいい。
・「芸術起業論」 村上 隆

表現し続けるためにはお金がいる。
お金を手に入れるには、日本ではなく世界で通用しなくては駄目だし、何年か、ではなく、何十年、何百年も保つアートが必要になる。
日本と欧米の美術界のルールの違い。
日本では「分からないもの」がアートであり、欧米では「新しい概念の提案」がアートである。
修行は必要なものである。
修行もせずに、挫折も味わわずに、何かを掴むことはできない。
熱湯に足をつっこんで、アチッとすぐに出るのではなく、茹で上がるまで突き進まないと、何も見えてこない。
面白かった。
しごくまっとうなことをまっとうに書いたのだろうけど、きっと嫌な人にはものすごく嫌な本になっているのだろうと思う。
中に、自分の興味をとことんまで追って分析しろ、という言葉が出てくる。
そうすると、今どうしてこんなことをやっているのか、という疑問も出てくる。
再考せざるを得なくなる。向き合わざるを得なくなる。
その本当の興味、やりたいこと、表現したいことを掴めないと、ぬるぬると同じことをやることになる。
そうなのだろうなと思う。
自分にはそこまでも覚悟もなく、書きたいことが本当に見えているのか、書きたいことをぎりぎりまで書こうとしているか、と言われると、そうではないなということは分かっている。
自分の興味をとことん追う、というのは厳しいことではあるけれど、その方向でないと掴めないものがあるのだろう。
・「六月六日生まれの天使」 愛川 晶

目が覚めると見知らぬ部屋で男と抱き合っていた主人公。
どうやら記憶がないらしい。
次第に明らかになる真相。その男も記憶がすぐに途切れる障害を負っていた。
ややこしい話で、全体的にもトリックが仕掛けられている。
とは言え、確認しようとまでは思わない。たぶんきちんと考えられているに違いないけど。
下のと同じ印象。
ミステリの場合、読み手はミステリ慣れしているし、最後のどんでん返しを楽しみにして、途中がつまらなくても最後まで読むものだろう。
読み手も驚かされるのを期待しているのだから、ややこしい仕掛けを施してもいい。
ラノベはもちろんそういうわけにはいかない。
当たり前なのだけど、忘れてしまいがちだ。
ラノベ読者は、冒頭が謎だらけで意味がわからないと読むのをやめてしまうと考えた方がいい。
だからミステリじみたものを書く場合でもそれを考慮して冒頭のハードルは下げるべきだ。
自分にはそういう配慮が欠けていると改めて思う。
・「コッペリア」 加納 朋子

人形に恋した男、その人形と瓜二つの女性、女性人形作家、そのパトロン、さまざまな人間関係が人形を軸に進んでいく。
視点変更がかなりあってややこしいし、トリックもある。
最初は面白かったのだけど、途中でごちゃごちゃしてきて、ななめ読みしていたのもあってよく分からなくなった。
きちんとトリックは考えてあるのだろうし、トリックというよりは人形をめぐる人の愛憎劇みたいなものを書きたかったのだろうと思う。
とは言え、ややこしくしても面白くなるわけではない。
それは自分が書いているものに言うべき言葉かも知れない。
複雑さが悪いわけじゃない。複雑だからこそ表現できるお話もあるし、そこに魅力がある作品もある。
でも複雑さは読みやすさを損ねる。
だから、読みにくいのを我慢して読み手に読んでもらうために別の引力が必要になる。
そうじゃないと読み終わったとき、ややこしいだけという印象しか残らない。
・「パーフェクトフレンド」 野崎 まど

不登校の天才に、友達について教えるクラスメイトのお話。
友達とは何かという問題の寓話のようにも読める。
軽い会話と文章で読みやすく、するする読み進めることができる。
そういった軽い表層と突然接続する魔法。
その魔法も計画だったのかも知れないのだけど、そういう中間をすっ飛ばしていきなり別のレイヤーにつながる、というのがこの方の持ち味なのかも知れない。
あくまで軽く読みやすい表面と、やや真実を含む深層のレイヤーとの接続。
面白いなー。
この方のは下のアムリタとこれで初めて読んだのだけど、こういう軽さが自分が書いているものにはまったくない。
暗すぎて、重たすぎる。やり過ぎ。
そうじゃなくて、もっと軽くして、暗いレイヤーにぽんと一瞬だけ接続する、そういうもので良いのだと思う。
なるほどなー。
・「ガーデン・ロスト」 紅玉 いづき

四人の高校生女子の繊細な関係性のお話。
一章ごとに視点人物がかわって、他の子に対するさまざまな思いが分かるようになっている。
やっぱり上手いんだろうなーと思う。
自分はあまりこういう繊細なものは楽しく読める方ではないのだけれど、触れそうで触れなくて、受け入れて否定して、傷つけて依存して、みたいな、そういうあやふやなものを書けるのはすごい技量なのだろう。
男子が読むにはちょっと難しいのかも知れない。
少女漫画にはこういうのはわりとあるんだろうなと思う。
・「[映]アムリタ」 野崎 まど

天才が仕掛けた映画制作のお話。
映画と心理操作みたいなものは普通は結びつかないと思うし、必然性もないと思うのだけど(映画じゃなくてもいい)、そこを映画にすることでお話の筋を通したということかなと思う。
サブリミナルとかリングの呪いのビデオなどからの類推なのかも知れない。
映画とそれに操作される人の脳、みたいなところに説明がほとんど無くて、そういうものなんだ、みたいにファンタジックになっているところもラノベらしいのかなとも思った。核心部分が空虚でも、それで問題ない。
仕掛けのある話というのは自分も稚拙ながら書いてみたけれど、自分のはまずやり過ぎているなと思う。
こういうぐっといきそうでいかないところというか、突っ込みすぎないところで止めるというか、適切なボリュームみたいなところがまったく分かっていない。
まあ仕掛自体もうまく書けてないのだろうけど。
なるほどなー。
会話も面白いし、お話に映画という筋を通してあるところなんかも、良いサイズかつ良いバランスなんだなーと思った。
・「小説の技巧」 デイヴィッド ロッジ

技術的な項目で分類されていて、小説の一部が載せられている。
ぱらぱらと見るだけでも面白い。こういう書き方あるな、とかこういう形式も面白いとか。
技術的な観点から書いてみるという方法もあると思う。
ただ書いている時にこういうことは気にしていないと思う。
振り返ってみれば、ああここはこういう技法を使っているな、とか思うものだろう。
分析しながら書くことは出来ないというか、書くというのは統合することだろうから、分析とは真逆になる。
たまに読み返せば得られるものもあると思う。
・「3・11の未来――日本・SF・創造力」

3.11を受けてSFは何ができるかとか、SF的想像力はどうなるか、といった論評や座談など。
うーんぜんぜん面白くない。
ちょっと面白かったのは山田正紀さんの発言ぐらいだろうか。それは自分の実感だけで語っているように思えるからかも知れない。
この期に及んでポストモダンがどうとか、ゴジラがどうとか、日本的なムラ社会がどうのこうのとか、そんな手垢のついた話どれほどの強度を持つだろう。
何にもないなーSF。
・「探偵小説と叙述トリック (ミネルヴァの梟は黄昏に飛びたつか?) 」 笠井 潔

ミステリマガジンか何かの連載をまとめたものらしい。
この方のは基本的に自分には合わないんだけど、作品の紹介としても読めて、そういった作品は読んでみようかと思った。
『アクロイド殺し』も読んでないし、綾辻さんの館ものも読んでない。
論というか、テーマについては特に何の知見も得られなかった。
ぐるぐる回っているだけで、どこにも進まないし、毎度のことながらどこかで聞いたことある話をしているだけの印象。
・「思想地図β vol.1」

特集は「ショッピング/パターン」。
最初に村上隆さん、猪瀬直樹さん、東浩紀さんの対談。そのころエロ漫画の規制をめぐって議論が白熱していたらしい。
東京都副知事の猪瀬さんはあくまでゾーニングの問題であって、表現規制とかそういう話ではない、としている。
それが周りに伝わっていないということらしかった。
表現や言論の自由とかそういう大きな正義みたいなところで脊髄反射的に動いてしまった人たち。
大声をただ上げたかった人たちがいたのだろう。
よくよく聞いてみるとそんな話じゃないという。
ショッピングモールをめぐる話題も面白かった。
議論というかディスカッションというのは、頭のいい仕切れる人がいて、議論をまとめながら発展させていかないと同じところでぐだぐだしてしまうものだろう。
東さんや、多分昔の浅田彰さんなんかは、そういう仕切りがすごくうまくて、議論も進むし、深まる。
上の3.11本も見習って欲しい。
後半のパターンの話はサイエンス領域と建築領域が重なる部分の議論で難しくていまひとつ興味もわかなかった。
この頃アニメ『フラクタル』の制作中だったようで、特集を組んであるのがおかしい。
・「思想地図β vol.2 震災以後」

vol2は震災が特集。
編集部も被災地に行ったようだ。津田大介さんがルポをまとめている。
行かないと分からないことはたくさんあるのだろうと思う。
そこに行った実感だけでも、大きな抽象的な議論だけでも駄目で、きっと両方が必要なのだろう。
東さんの切迫した危機感と東さんより若い人たちとのある種の温度差が面白い。
話は噛み合わなかったりするのだけど、それがまた興味深い。
上の3.11本も見習って欲しい。
・「人間の尊厳と八〇〇メートル」 深水 黎一郎

短篇集。
上手いのかも知れないし、文章に工夫もあるようだけど、これを面白いと思って読む人がいるんだろうか。
何にもない。
見たもの
・第 59 回 石川県書道協会展
・金沢発信アウトサイダーアート vol.4
・第 72 回愛石会ざーっと見ただけ。
書道はよく分からないけどいいなと思うものもある。
小中学生の習字が壁面に貼られていて、同じ文字がずっと続いているのがおかしい。
アウトサイダーアートはたぶん障害を持っている方たちの作品展示なんだろう。面白いものもあった。
アウトサイダーアートという名前には笑ってしまった。自分で言うなみたいな。まあ主催者さんがつけたんだろうけど。
愛石会は去年も見たような気がする。
面白い石が盆栽みたいな感じでたくさん並んでいる。名前をつけてあったり。
石を愛でる、というのは分からなくもない。良い石とかは分からないけど。
どこかに石を探しにいったりするのだろう。石を持ち帰るのはよくない(何か障り?がある)、なんて聞いたことがあるけど、こういう人たちはどう考えているのだろうか。
・「31人の感性」金沢卯辰山工芸工房研修者作品展見応えのある作品ばかりだけど、見たことあるものもあった。去年と同じ作品があったかも知れない。
二年とか三年とかかけて一作つくるというのはどういう感じなんだろうか。
そういうペースで生きる(実際に生活できるかは別にして)のは羨ましくも思う。
世界はその人の意識の持ち方によって速くも遅くもなるように思う。
だいたいの人は誰かの速度(つまり世間の、社会の、速度)に合わせて一生を終えるのではないだろうか。